一生の宝物★JET体験記

様々な業務
　石川県の国際交流員としての業務は、主に通訳と翻訳、在住外国人のための情報提供、国際交流イベントの企画や参加、韓国語教室、各学校や生涯学習院での講座などでした。

　出勤するとすぐに私を待っていた業務は、県内自治体の観光パンフレットを翻訳することでした。長い間仕事をしていれば知っていて当然な地名、特産物の名前も、当時は一つ一つ探しながら、長い時間をかけて翻訳した覚えがあります。そして、数年後にその時私が翻訳したものを見て恥ずかしかった記憶も思い出されます。すべてが苦手でしかない時だったでしょう。

　最初は緊張して難しかったですが、後にも非常に好きだった仕事は通訳です。石川県は、全羅北道と友好交流を結んでおり、青少年交流をはじめ、環境、農業など様々な分野での交流のための通訳業務がありました。その中でも、農業交流通訳が深く印象に残っています。ブロッコリー畑やトマトのビニールハウスなど、初めて行ったところも多く、四角いスイカを作るための研究など興味深いトピックが多かったです。専門用語も多く、難しいことは難しかったですが、その分多くの方々が通訳の難しさを理解してくださり、たくさん助けてくださったおかげで、より多くの会話も続けることができ、大きなやりがいを感じました。通訳という仕事は、単に言語を伝達することではなく、人と人とを繋ぐことであるということ、その感じが通訳業務を好きにさせました。

　

石川県での生活
　私が住んでいた金沢市は、家から歩いて行くことができる距離に金沢城をはじめ、武家屋敷や茶屋街もあり、日常生活の中で、日本の伝統を感じることができる美しい街です。特別なことがなくても、中世の街をジョギングして散策することができた日常がとても良かったですし、伝統が残っている都市であるだけに、着物や生け花などの日本の伝統文化を学ぶことができる機会が多かったです。

JETプログラムに参加してから
　韓国で日本語という外国語を専攻したものの何人かの日本人の友人を除いては、外国人の知人が多かった訳ではありませんでした。私が国際交流員として日本で働いて最も得をしたことは、外国人労働者という社会的少数者となる経験をしたことです。そして、過去の私が社会的少数者についてどのような考えを持ってどのように応対していたか深く反省しました。なかなか自分がその立場にさらされなければ目に見えないことが多いものです。事実、国際交流員は、外国人労働者の中では身分が確実で待遇も良い方で、周囲のサポートも心強いです。しかし、日本でも韓国でも、そうでない外国人がどれだけ多くいて、いかなる境遇にあるか疑問に思うきっかけとなり、それだけでJETプログラムに参加した意義が十分にあると考えています。

 
後輩の方々に
　私が日本に来たときは、ちょうど韓流ブームの真っ最中でした。どこに行っても歓迎を受け、韓国の話を聞きたがり、韓国語を学びたがる方が多かったです。先輩交流員の方からも良い時に来たと言っていただいたことがありました。今はどうでしょうか？そうではありません。国際交流員の任期が終わってからも日本にずっと住んでいる私としては、社会の雰囲気がどれだけ早く、大きく変わるものなのかに毎日驚きます。しかし、これもまた変わります。大きくは、世界情勢などの影響があるでしょうが、すぐ身近な周囲は、あなたの活躍で一つ一つ変えていくことができるでしょう。がんばってください。