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Another Sky-第2のふるさと-

  • 〔静岡県〕富士山麓に広がる心のふるさと
  • 2023-12-14
  • 李錫泳(イ・ソギョン)

    静岡県 2016年4月~2021年3月 CIR

  • 〔静岡県〕富士山麓に広がる心のふるさと

    国境を超える往来が再開されて、多くの方が日本に訪れているかと思います。皆さんは「日本」と言われたら、どのような風景が心の中に描かれているのでしょうか。北海道の大自然が思い浮かぶ方もいらっしゃれば、東京・大阪など大都市の現代的な風景、和食、アニメ、モノなど、様々な風景が思い浮かぶ方もいらっしゃると思います。私の場合、真っ白な雪化粧をした富士山が美しい海、街並みが調和している景色を思い浮かべます。私はJETプログラムに参加し、静岡県庁で5年間国際交流員として勤務しました。この静岡県に住んでいた時間は、大きく人生を変えた学びや気づきもあり、日本における自分の原点でもあります。そして、私は現在も第2の故郷となった静岡で暮らし続けています。皆さんには、この場を借りて私の第2の故郷である静岡のお話をご紹介したいと思います。

    【さった峠】
     
    世界の宝物、日本を代表する世界文化遺産「富士山」
     日本を代表する象徴的な存在でもあり、最も高い山でもある富士山。その姿はマスコミや書籍等でも桜や紅葉、湖、海といった色んな自然風景と一緒に真っ白な雪化粧姿で登場することが多いです。その雄大な姿には、日本のみならず、世界中の人が感動と喜びを感じさせられます。富士山を楽しめる絶景スポットや観光施設もありますが、今回は富士山について、今でも鮮明に覚えている場面に少し触れたいと思います。
     
    ある日、出張で新幹線に乗って東京に向かっている日の出来事でした。 雲ひとつない青空の下、車窓越しにそびえ立っている富士山の姿が見えると、列車の中にいた乗客たちは、携帯電話を取り出して写真を撮り、話に花を咲かせ始めました。富士山とは反対側の座席に座っていた私は、彼らの肩越しに富士山の姿を眺めていました。その時、窓際の席に座っていた中年の女性が富士山に向かって両手を合わせて祈りを捧げる姿が目に入りました。韓国では、山岳崇拝という概念がなく不慣れだったこともあり、その姿は今でもとても印象深く残っています。
    富士山は「信仰の対象と芸術の源泉」として、2013年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。「山」が文化遺産として登録されたのは、山としての自然の価値よりか、その荘厳な姿が古代から今日に至るまで、神として崇拝される「信仰の伝統に息吹を与えてきた価値」によるものです。そして、海と湖など周辺の風景と富士山が織りなす絶景が多くの人にインスピレーションを与え、古代の詩や浮世絵をはじめとする数多くの芸術作品を誕生させた源でもあります。新幹線の中の女性は、富士山に何を願って祈っていたのでしょうか。日本人の精神と文化に深く根ざしている富士山の一面を垣間見ることができました。
     
    ●「旨いら?」方言とグルメをきっかけに深掘りした静岡の魅力
    韓国にも方言があり、日本にも方言があります。日本語を勉強する外国人は、通常「標準語」と呼ばれる日本語を学習するので、地域によって違うイントネーションや表現には馴染みが薄いです。私の場合、関西弁をよく日本のテレビ番組で聞いていましたが、静岡の方言である静岡弁を実際に聞いたのは、静岡県庁に赴任して職場の同僚と一緒に歓迎会で市内の居酒屋に足を運んだ時でした。その居酒屋は、地域の食材を使った料理を提供していました。最初、私の目を引いた食べ物は、楕円形のフライでした。同僚に聞くと「はんぺんフライ」とのことでしたが、どうやら韓国で見てきた「おでん(はんぺん)」とは違う、馴染みのない黒いはんぺんフライの姿は驚きでした。怪しげな気持ちでしたが、ソースをかけ、辛子を付けて一口食べてみると、とてもおいしく、「旨い!」と言わざるを得ませんでした。そうすると静岡出身の同僚たちが「旨いら?」と笑顔と一緒に答えてくれて、「静岡割」という飲み物も勧めてくれました。ちなみに、静岡割というのは、焼酎やウォッカ、ジン等を緑茶で割った飲料の通称です。
        
     
    静岡で生活しながら、同僚たちの会話に耳を傾けてみると、どうやら語尾に「だら」「ら」がよく使われていることに気づきました。それは、「だよね」「だろう」という意味で使われているそうですが、2つの言葉には若干ニュアンスの違いがあるようです。「飲むら」と言うと「よかったら飲む?」のように優しいニュアンスですが、「飲むだら?」は「もちろん飲むでしょう?」といった少し強めのニュアンスに聞こえるようです。他にも「ちょびちょび」や「えらい」等の表現や特徴がありますが、静岡弁は全体的に強い口調ではなく、ゆったりとした印象で暖かさを感じさせてくれます。もし皆さんが、静岡人や静岡現地に行って話を聞く機会があったら、ぜひ耳を傾けてみてほしいです。
    こうして生活の中で感じるちょっとした違いに気づき、食べたことのないグルメ等に挑戦していくうちに、静岡のファンになり、地域のことを深掘りするようになりました。東西に長く新幹線の停車駅が6つもある静岡県を端から端まで一周することで地域住民や旅行者にも知られている名物グルメを数多く見つけました。
    日本一の生産量を誇るお茶や駿河湾でしか獲れない桜えび、生わさびをすりおろしてソフトクリームにのっけて食べるアイスクリーム、静岡おでん、富士宮焼きそば、さわやかハンバーグ、日本一水揚げ量を誇るマグロ、浜名湖の鰻など、どれも各地域の人々に愛されて、親しまれてきました。それらは、豊富で綺麗な水や空気、広い海、温暖な気候など、静岡の豊かな自然環境により育まれたモノです。何故、誰がどのように育ててきたモノなのか、ローカルフードに関わる人々のストーリーを見つけ、体感するのも静岡旅行の醍醐味かもしれません。
         
       
    ●日本のローカルを存分に堪能する最高の感動体験
    ご存知かと思いますが、日本全国各地には、その地域でしか味わえない独特な文化や体験が存在します。ここでは、5年間静岡過ごして最も感動と喜びを感じた体験をいくつかご紹介したいと思います。
     
    ①  たきや漁
    静岡県西部に位置する浜松市の浜名湖には、「たきや漁」という100年以上の歴史を持つ独特の伝統漁があります。伝統漁は日暮れと共に小船を出して出発します。漁が行われる浅瀬周辺は暗闇の中です。その時、水の中を電灯で照らして寝ている魚や潜んでいる獲物をモリで突いたり網ですくったりして捕まえます。浜名湖は灘と繋がっている汽水湖です。平均水深は5mと比較的浅く、波が穏やかで静かで湖底までの見通しが良いので、モリで突くのに適しており、この漁法が生まれ受け継がれてきたそうです。獲れた魚はお持ち帰りもできますが、たきや亭という浜名湖に浮かぶ筏の上で食べることもできます。船の船頭が獲れた魚介類を使った天ぷらや味噌汁など、その場で調理してくれる海の幸は最高です。漁は5〜9月にかけて行われます。
         

    ②  MT. FUJI SATOYAMA VACATION(マウントフジ里山バケーション)/En-Ya Mt. Fuji Ecotours
    富士山麓の富士宮に位置するエコツアー&グランピング施設です。富士山信仰に係る歴史や伝統文化をはじめ、富士山によって育まれた豊富な伏流水による雄大な滝、日本酒、この地域に住まう人々の生き方など、自然と地域社会に直接触れることができます。
       
    出典:exploreshizuoka.jp
     
    ③  達磨山ハイキング
    伊豆半島に位置している達磨山は、その姿が座禅した達磨大師に似ていることに由来して名付けられました。三景観のひとつに選ばれた駿河湾と富士山の眺望を楽しめるので、ハイキングコースとしてお勧めです。山頂からの展望は360度パノラマ景色が広がり、山頂に吹き抜ける風が心地よいです。最寄り駅からバス1本で行くことができ、登山道も整備されているため、登山経験の浅い初心者も挑戦しやすい山といえます。

     
    ●日本の縮図のようで、日本の原風景を持つ静岡
    誰かから「一言で静岡県といえば」聞かれると、どう答えるべきか頭を悩まされました。静岡は、東西南北、季節ごとに異なる姿を見せてくれて、体験や食も豊富です。静岡には日本の象徴的な存在「富士山」が位置し、古くから現代まで日本の大動脈と言える「東海道」があり、この地域に息づいている歴史と伝統、文化、自然と日常の暮らなど日本の原型が息づいていると考えます。知られざる静岡の魅力を是非ご堪能ください。
     
    静岡県に関する観光情報
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