HOME > JETプログラム > Another Sky-第2のふるさと-

Another Sky-第2のふるさと-

  • 〔熊本市〕九州のおへそ!魅力のあふれる都市「熊本」
  • 2023-03-13
  • 李英洙(イ・ヨンス) 

    熊本県熊本市 2016年4月~2022年4月 CIR

  • 〔熊本市〕九州のおへそ!魅力のあふれる都市「熊本」
     
     熊本の知名度を上げるのに一役買っているグローバル人気キャラクター「くまモン」。活発な活動にふさわしい様々なテーマ曲も持っていますが、そのうちの一曲「くまモン体操」は、こんな歌詞で始まります。「九州のおへそ~くまもと~おへその上でピタッと新幹線♪」

     そうです!九州のほぼ真ん中に位置する熊本!韓国には、熊本城・阿蘇・黒川温泉のような名所でよく知られている地域です。私が勤めていた熊本市は、熊本県庁が所在する熊本地域の中心都市でありながら、韓国の広域市に当たる政令指定都市で、豊富な自然環境や400年余りの熊本城で代表される由緒ある歴史、活気あふれる街並みや愛郷心あふれる人々、積極的に取り組んでいる都市景観整備やインフラ構築で明日がもっと期待される多様な魅力の都市です!

     私の人生で最も長い期間を過ごした「アナザースカイ」でもある熊本について、私が属していた熊本市を中心に皆さんにご紹介します。
     
                                  熊本城と市電                      晴れの日に見える阿蘇の中岳(市役所の展望ロビー)    


    九州の道は熊本を通してつながる!
     熊本は、九州のおへそというくまモン体操の表現の通り、アクセスがとても良いところです。2011年に九州新幹線の全線開通で、福岡までは33分、鹿児島までは最短44分で行くことができ、日常生活だけでなく観光客の移動もとても便利になりました。九州各地域へ行き来しやすい地理的な利点に加え、日本最大級のバスターミナルも備えており、北九州や南九州の様々な観光地への移動も便利です。また、東の方面は阿蘇、西の方面は天草など、熊本の主要観光地までも約1時間で行けるのも魅力です。
     韓国からは、福岡を経由し新幹線で1時間以内、もしくはバスで2時間で到着できます。現在、コロナで運休中のソウル発などの直行便が再開されたら、2023年春には全面リニューアルが終わり、より一層快適になった阿蘇·くまもと空港から熊本市内まで1時間以内に着くことができ、さらに便利に移動できます。
      
    四季折々の美しい阿蘇                      天草イルカウォッチング

    400年の史、熊本城を中心にえてきた街
     熊本市は都心の軸としてそびえたつ熊本城を中心に栄えてきた街です。地面付近は勾配がゆるく、上に行くにしたがって勾配がきつくなることから「武者返し」と呼ばれる独特な反りが素敵な石垣や広大な規模の熊本城は400年以上熊本で愛されてきました。2016年の熊本地震後、城跡の全区域にわたって20年という復旧期間を見込まれていますが、現在、復旧が完了した天守閣を含め、特別見学ルートで復旧の様子を見ることができ、復旧工程によってはその公開範囲も広がっています。いつかは、このような現在の様子も歴史の1ページに刻まれるでしょう。「今しか見られない熊本城」へ足を運んでみるのはいかがでしょうか?
      
        熊本城(市役所の展望ロビー)                銀杏城とも呼ばれている熊本城の秋 

     お城の周辺の古町·新町地区を歩いていると、古民家を活用したカフェや近代文化遺産に指定された建築物などもあり、城下町ならではの趣を感じることができます。また、そのエリアを少し離れると、西日本最大級のアーケード商店街に繋がる繁華街が広がりますが、このような街並みを約100年の歴史の間、路面電車が走っており、観光客にはレトロ風の情緒を感じさせてくれます。JRの駅を中心に都心部が造成されている多くの地方都市とは多少違う雰囲気を感じられるのも、こうした雰囲気のためではないかと思います。

     ここ数年間は、中心部から路面電車で約20分ほど離れた熊本駅前の環境整備にも取り組み、2020年には韓国にもよく知られている有名建築家の安藤忠雄が設計した熊本城の「武者返し」の石垣の形をした外観にリニューアルしたほか、様々な商業施設やイベントスペースが駅前広場に造成され、熊本への関門の役割にとどまっていた昔の姿から変貌し、熊本旅行の必須の観光地となりました。
      
                           活気あふれる通町筋                       熊本城の石垣「武者返し」をイメージにリニューアルされた熊本駅     

    蛇口をひねると天然ミネラルウォーターが!「水の国」熊本
      火山が息づく世界ジオパーク、阿蘇の大自然に恵まれた熊本を「火の国」と呼んだりしますが、その地形の影響からきれいな地下水があふれる熊本は「水の国」とも呼ばれています。
     阿蘇の噴火で形成された熊本地方の地層は隙間が多く、雨水が浸透しやすい特徴があります。 阿蘇地域に降った雨水は大地のあちこちの地層に染み込み、約20年にかけて熊本市内に到達しますが、その過程でミネラル成分が溶け込み、味も良く体にも良い天然水が生まれるのです。 全国平均より高い降水量や、約420年前に当時の領主だった加藤清正が進めた水田開発も豊富な地下水環境に一役買ったと言われています。
     自然に恵まれた環境は、今では住民のものとなり、熊本市では人口74万のすべての世帯に水道水100%を天然地下水で供給しています! 人口50万以上の都市の中では日本で唯一で、世界でも珍しいです。 文字通り「水の国」! 天然地下水の都市らしいでしょう。

     このように「蛇口から天然ミネラルウォーターがでる」熊本では、飲用水だけでなく料理やお風呂など日常のすべてをミネラルウォーターで堪能できる贅沢な体験ができます。
      
                              水前寺公園                                              熊本市民の憩い場、江津湖                 

    きれいな環境で育った食材で作られた熊本の味
     豊かな自然やきれいな地下水環境に恵まれた熊本市は、米・野菜・果物・お花・酪農業など、多様な農産物の生産も栄えており、その生産額は、政令指定都市および全国自治体の中でも上位を占めています。特に、熊本産スイカ・トマト・いちご・メロン・なす・みかんなどは、全国でもネームバリューの高い特産品です。
     また、熊本の名物といえば、さまざまな調理法で楽しむ馬肉、細川藩主の保養食として捧げられたと言われる「からし蓮根」、さっとゆでた一文字をぐるぐると巻き付け、辛子を付けて食べる「人文字ぐるぐる」、ニンニクチップとニンニク油を添え、韓国人の口にもよく合う「熊本ラーメン」、台湾発祥で熊本の郷土料理として定着した「太平燕(タイピーエン)」などが真っ先に挙げられます。馬肉や、からし蓮根、人文字ぐるぐるなどは、必ずしも専門店を訪れなくても居酒屋などで郷土料理のセットメニューとして気軽に楽しめます。
     他にも、熊本にはフュージョン・創作料理が多いのも特徴! どこで何を食べても、きれいな水や、その水で育った食材で作った熊本料理は、はずれがなく、旅行のクオリティをさらにアップしてくれます。
        
            からし蓮根                    馬刺しなどの郷土料理セット                     太平燕            
     
    近代文学の巨匠の足跡をたどることができる熊本
     江戸から明治時代を経て近代に至るまで、熊本市は九州の最大都市として栄え、新文物が一足先に入ってきたところ。ということで、医学・教育・文学など、多様な分野の有職者の足跡が残っている地域でもあります。
     特に、ノーベル文学賞を受賞した2人の日本人の作家よりも、韓国でよく知られている有名作家「夏目漱石」のゆかりの場所がたくさんあり、縁の深いところです。東京出身の夏目漱石は、熊本大学の前身である第五高校に英語教師として赴任した4年3ヶ月間、数々の俳句や小説「草枕」などの作品を生みました。4年3か月の滞在期間中、6回も転居したという話は有名ですが、そのうち5番目の家だった内坪井旧居で、最も長い1年8ヶ月を暮らしていた間に長女が生まれました。後に奥さんの京子夫人は「熊本で住んだ家の中で一番良かった」と語ったといわれています。
     内坪井旧居は、私が住んでいた家ともとても近く、熊本城方面へ散歩に行く時は、たまに覗いていた所でもありました。あいにく、私が熊本に来た翌日に起きた大きな地震で被害を受け、帰ってくる時までずっと休館であったため、内部を見る機会はありませんでしたが、長女が生まれた時に使ったと言われている井戸跡や窓ガラス越しに見える夏目漱石の蝋人形などを見ることが出来、日本を代表する近代作家の後足を感じることが出来ました。他にも、夏目漱石の旧居はほとんど記念館として開放されています。
      
    夏目漱石の内坪井旧居                                             草枕の道(金峰山)  

    毎日の日常が旅行となった私のアナザースカイ
     私が住んでいた「熊本のわが町」は、熊本城を囲むように流れている坪井川の上流、「坪井」というところです。夕暮れの頃には、坪井川沿いを散歩しながら、その日の夕焼けの様子を楽しんだり、季節の変化を感じたりすることができました。熊本が「水の国」であることを肌で感じられる場所としては、都心の真ん中に「江津湖」があり、澄んだ小川沿いを歩いて湖に着いたら、あちこちから湧き出ている地下水を味わうことができ、広々とした芝生で簡単なピクニックを楽しむこともできます。
     いまだに印象的な隠れ名所の中には、「日本一の石段3,333」という登山コースがあります! 山頂まで3,333段の石で作られており、多くの人々が挑戦闘志を燃やすところでもあります。800段目くらい登った時、限界を感じくじけそうになったところでしたが、同僚のおかげで頂上まで完走!数日間、太ももの筋肉痛で苦しんだことをいまだに鮮明に覚えています。石段の一部は、いろんな国から持ってきた石で作られた区間もありますが、2100~2200段の区間は韓国の忠清北道陰城郡の石で作られています! 3,333石段は、ピリッとした筋肉痛とともに、今後も記憶に残る熊本の穴場でした。

     この文章を書いている今も、坪井川の空は夕焼けが彩り、くまモンラッピングの市電や菊電は、仕事帰りの人々を乗せて街中を走っているのでしょう。「肥後のいっちょ残し」で譲り合いながら、お酒一杯と一日を締めくくっている人たちもね!
     偏西風の影響なのか、地元である釜山に雨が降ると、翌日には必ず熊本にも雨が降り、遠くて近い国であることをいつも実感させてくれた熊本。
     私のアナザースカイ、熊本の多様な魅力を皆さんにもぜひ楽しんでいただけたらと思います!
      
                     江津湖でのピクニック                                               散歩で楽しんだ夕暮れの坪井川          
     
     
    上記は、2022年秋頃に執筆したものになります。