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韓国地方行政研究院との連携

直近開催の詳細

  • 2012年 共同研究会
  • 韓国地方行政研究院(KRILA)との共同研究会開催 2012年CLAIR-KRILA共同研究会~日韓の地方自治体の福祉行財政研究~
  • 2013-07-24
  • 韓国地方行政研究院(KRILA)との共同研究会開催
    2012年CLAIR-KRILA共同研究会~日韓の地方自治体の福祉行財政研究~
     
     ソウル事務所では、2009年度に韓国の地方自治に関する総合的な政策研究機関(行政安全部の傘下機関)である「韓国地方行政研究院(KRILA)」と「協力及び情報交流に関する協約(MOU)」を締結し、共同で研究活動やシンポジウムを開催しています。今年度は、「日韓の福祉行財政」をテーマに比較研究を行うこととしており、第1回目を2012年5月31日(木)に、第2回目を2012年7月26日(木)に開催しました。

    1 第1回共同研究会
    第1回共同研究会では、日韓の福祉行政について財政面からとらえるため、韓国地方行政研究院先任研究員の李相龍氏が「韓国地方自治体の福祉財政の現況及び課題」について、当事務所澤田次長が『「社会福祉制度」について ~地方財源を中心として~』をテーマに発表されました。

    (韓国側発表)
     韓国の少子高齢化に係る広域自治体別の予算を見ると、ソウル特別市を除き、高齢者人口が多いほど地方負担が重く、国の補助がより多く必要な状況になっている。その中で蔚山広域市は、高齢化率が6%台にとどまり、地方費率が高いのが特徴的で、これは蔚山広域市に現代グループの企業が多く、自動車の生産高で韓国一位である工業都市であるため。
    韓国でも基礎自治団体の財源に差があり、サービスに地域格差が出ることが深刻な問題になっているが、まだ日本ほど住民の意識には実感がないようである。研究者の間でも韓国の福祉政策は始まったばかりで、まだ成果を評価する段階にはないとの認識がある。
    (日本側発表)
     日本では、高齢者向けの保健・福祉サービスを統合した「介護保険法」が施行され、要介護者を社会全体で支える新たな仕組みとして2000年に介護保険制度が始まり、定着してきたところであるが、財源の半分を被保険者の納付する保険料によっており、高齢者からの徴収が難しい点等が課題とされている。

    2 第2回共同研究会
    第2回共同研究会では、日本から小樽商科大学の片桐由喜教授を招聘し、より具体的な地域の取組事例として「地域社会における権利擁護 -市民後見人制度の意義と課題-」について発表いただき、韓国地方行政研究院研究委員の徐廷燮氏が、「地方自治体の社会福祉支出の実態と問題」と題し、国と地方自治体の社会福祉財政の比較を中心に発表されました。
    (日本側発表)
    従来、介護サービス等は行政が行う措置制度に基づいてなされていたが、介護保険制度では、措置ではなく利用者がサービス提供者と契約を結ぶという形になった。しかし、認知症等で判断能力がない人がサービスを受けるための契約をする際、手助けが必要になることから介護保険制度に併せ成年後見制度が施行された。
    成年後見人等に就任すべき親族がおらず、本人に多額の財産がなく紛争性もない場合について、これを補完するために本人と同じ地域に居住する市民が、地域のネットワークを利用した地域密着型の事務を行うのが市民後見人制度である。もとはドイツで先行されている「成年者世話法」を参考に、日本に合うようにしてつくられたもので、日本での先進地域は、大阪市、大津市、伊賀市、品川区、世田谷区等がある。
    小樽市等の場合、2010年に「小樽市・北しりべし成年後見センター」が発足し、小樽市と近隣5町村からの予算で運営されており、基礎・実践養成講座を修了後、市民後見人登録をしているのは約30名である。市民後見人制度は、今年3月に厚生労働省老健局高齢者支援課から出された「市民後見人の育成及び活用に向けた取組について」にあるように、市町村の努力義務により取り組むべき任意制度であり、日本でもまだ市民後見人制度のない地域が多く発展途上にある。
    (韓国側発表)
    韓国においても住民に身近なサービスは身近な基礎自治体へと権限が委譲されているが、福祉における地方単独事業の比率は、日本に比べ低い。
    (韓国の地方自治体の社会福祉事業について、詳細データに基づいた説明があり、具体的に全羅北道等の事例を取り上げ、中央と地方の葛藤についても言及された。)
     
    第2回共同研究会の様子        第2回共同研究会の様子
    第2回共同研究会の様子(韓国地方行政研究院セミナー室)

    3 おわりに
    2012年10月11日(木)には、今年度の総括としての共同セミナーを予定しています。行政関係者や学識経験者等が会し、地方行政の視点から日韓の相互理解を深める機会になればと思います。
    萬谷所長補佐 京都府派遣