2014年11月
ソウル事務所
クレアソウル事務所では、韓国の著名漫画家ホ・ヨンマン画伯を日本の観光地に招致し、各地域の魅力を韓国に向けて発信する事業を行っています。
今回は、2014年10月5日(日)~9日(木)の日程で実施した佐賀県での取材の様子を紹介します。
1 旅の始まりは懐かしい再会から
台風の九州接近が心配される中、取材団一行は、小雨混じりの佐賀空港に降り立ちました。一抹の不安を抱えながら到着ゲートを出ると、そこでは、佐賀県による歓迎の横断幕が取材団を出迎えてくれました。その後、画伯らを乗せたバスは一路、唐津市へ。初日の宿泊先である洋々閣では、2012年11月、この事業で唐津市を訪れた際のご縁で当時お世話になった旅館の御主人らが画伯らとの懐かしい再会を待ち望んでいました。到着早々、日本の温かいおもてなしの心に触れ、自然と取材への意欲も湧き上がります。2日目からは、台風の接近が嘘のように晴れ渡り、無事に取材がスタートしました。
歓迎の横断幕「佐賀県へようこそ!」
洋々閣ご主人夫妻似顔絵(2012年11月ホ画伯作)

画伯とご主人夫妻

呼子のイカ活造り
JR車内でスケッチする画伯
JR車内からの風景
終着駅の武雄温泉駅では、九州の駅弁グランプリで優勝した「佐賀牛すき焼き弁当」で腹ごしらえ。駅校内には、この弁当を定食として食べることが出来る唯一の食堂「カイロ堂」があり、一緒に武雄焼のカップでコーヒーを飲むことも出来ます。佐賀牛の最高級レベルの肉のみを使用した贅沢な味を堪能しました。


武雄温泉駅「佐賀牛すき焼き弁当」
昼食後は、九州オルレ・武雄コースのゴール地点である、武雄温泉・楼門を目指しながら、武雄温泉街を散策しました。1300年の歴史を誇る武雄温泉は、宮本武蔵やシーボルト、伊達政宗といった歴史上名高い人物が入浴した記録があります。入口にそびえる朱塗りの楼門(ろうもん)は竜宮を連想させる鮮やかな色調で、釘を1本も使用していない建造物で国の重要文化財に指定されています。
武雄温泉を後にした取材団は、さらに歩いて武雄市最古の武雄神社を参拝。こちらには、市の天然記念物に指定された「武雄の大楠」があります。全国巨木第7位にランクし、樹齢は3000年以上。樹高30m、幹回り20mの大楠はこの神社の神木となっており、まるで象の足のような根元はその中央が地表近くで大きく開き、その中に天神が祀られています。辺り一帯は静寂に包まれ、神々しい雰囲気が漂っています。取材陣も大楠を見上げてしばし立ちすくみます。
大楠に底知れぬパワーを分けて頂いた後は、武雄市図書館へ移動。街の中心部に位置する図書館は、民間企業にその運営を委託し、館内には全国的にも有名なコーヒーチェーンやDVDレンタル店が併設されています。館内はコーヒーを片手に読書やおしゃべりをする人で賑わい、市外からの利用者が4割にもなるなど、新しい観光名所になっています。館内は吹き抜けの大空間になっており、入口から入ると目の前に本の壁が広がります。中を歩くと、本の森を歩いているような気分になります。取材団も散策で疲れた足を休めながら、読書を楽しみました。

武雄温泉・楼門

武雄の大楠

武雄図書館(外観)

武雄市図書館(内観)
3 九州オルレ・嬉野コース体験
今回の取材の前に取材団から特に希望が強かったものの1つが、九州オルレの体験でした。「オルレ」は韓国・済州島から始まったもので、韓国はオルレ発祥の地。取材団も興味津々です。早朝からトレッキングの装いに身を固めて、いざ出発。佐賀県には九州で最多の3つのコースがありますが、今回はその中でも最も新しく認定された嬉野コースに挑みました。嬉野コースは全長12.5km。焼き物の町‘吉田皿屋’地域からスタートします。整然と建ち並ぶ家屋の中に陶磁製品を売る店が立ち並び、焼き物の破片を繋ぎ合わせて作った壁面やお地蔵さんと風車が印象的な大定寺、焼き物の神を祀る吉浦神社などが続きます。町を抜けると、青空の下に広大な緑茶畑が広がります。茶の緑と空の青さが生み出す絶景は、このコースの最大の見どころです。取材団もこの絶景をカメラに収めようと思い思いにシャッターを切っていました。全国随一のうれしの茶の郷を抜けると、真っ直ぐに伸びたメタセコイアが群生する「22世紀アジアの森」へと続いて行きます。途中、当コース名物のお弁当をほおばりながら、アジアの森を抜け、静かに流れる嬉野川に沿ってフィニッシュ地点である温泉街、シーボルトの足湯へ向かいました。歩き終えた取材団は、嬉野のシンボルである「シーボルトの湯」で、疲れた身体を癒しました。

陶磁の壁画

嬉野コースの絶景

コースの案内を受ける画伯ら
参考URL 一般社団法人九州観光推進機構 http://www.welcomekyushu.jp/kyushuolle/
4 日本三大美肌の湯、嬉野温泉
その昔、神功皇后(じんぐうこうごう)が戦の帰りに立ち寄ったこの地で傷ついた白鶴を見つけ、その鶴が疲れた羽を湯に浸し、再び元気に飛び立つ姿を見て、戦で傷ついた兵士を入れてみたところ、実は温泉が湧いていて、兵士の傷が癒えたとか。それに喜んだ皇后が「あな、うれしいの」と呟いたことからこの地が「うれしの」と呼ばれる起源になったと伝えられています。嬉野温泉の湯は、無色透明のナトリウムを多く含む重曹泉で、昔から浸かるだけで肌をツルツルさせる美肌温泉として人気を博しています。旅館ごとに趣向を凝らした様々な温泉があり、旅人の心と体を癒してくれます。
茶心の宿、和楽園は、寛ぎを極めた和のしつらえ、数寄屋造りの建築が純和風の佇まいを醸し、日本庭園と調和した落ち着いた雰囲気の中で露天風呂を楽しむことができます。また、お茶の産地嬉野ならではのお茶風呂は温泉脇にある石造りの急須からお茶のエキスがたっぷり注がれ、リラックス効果や美白効果を高めるそうです。
和多屋別荘は、江戸時代、長崎街道を往来した島津家薩摩藩が旅の途中で休息した宿場に端を発した伝統ある旅館です。嬉野川をまたいで広がる、非日常の空間で贅沢な時間を過ごすことができます。これまで日本を代表する貴賓を多くお迎えした水明荘。専用の湯殿(ゆどの)心晶(しんしょう)はほのかな木の香りが広がり、生い茂る木々に抱かれながら森林浴のような心地よさを味わえる贅沢湯で五感を癒します。

和楽園(嬉野市)

和多屋別荘(嬉野市)
参考URL 一般社団法人 嬉野温泉観光協会 http://spa-u.net/
5 磁器発祥の地、有田町
日本磁器発祥の地、有田の歴史は、17世紀初頭、朝鮮人陶工李参平(日本名:「金ヶ江三兵衛(かながえさんべえ)」が有田東部の泉山で陶石(磁器の原料)を発見したことから始まります。「有田焼」は韓国からの技術を基礎に、日本独特の美意識によって発達した代表的な伝統工芸品です。李参平は、白磁鉱を発見し、近くの上白川に天狗谷窯を開き日本初の白磁を焼いたとされ、有田焼の祖と言われています。一行は、この李参平を「陶祖」として尊重し祭神とする陶山神社を訪れました。陶山神社は1658年頃に建立され、神社には他では見ることができない、すべて磁器製の大鳥居や狛犬、大水瓶、欄干など、焼き物の町ならではの風情に触れることができます。また、有田町には、初代、李参平を継承する「陶祖李参平窯」があり、現在は金ヶ江省平氏が第14代金ヶ江三兵衛を襲名して窯を守っています。金ヶ江氏と面会した取材団は一様に陶磁器を通じた両国の繋がりの深さを感じている様子でした。

陶山神社(鳥居)

陶山神社でスケッチする画伯

「陶祖李参平碑」のスケッチ

第14代金ヶ江三兵衛氏と記念撮影
李参平像
参考URL 有田観光協会 http://www.arita.jp/
6 最後に
今回は、嬉野温泉を中心に取材を行いましたが、九州オルレコースや有田焼などの伝統文化体験を通じて、佐賀県の魅力を体感すると同時に、それらのルーツに韓国との深い繋がりがあることが分かりました。また、ユニークな取組みで観光スポットとなった武雄市図書館などの新たな魅力も加わって、古き良き伝統と新たな文化が息づく佐賀を満喫する取材となりました。
(古殿所長補佐 鹿児島県派遣)